常習飲酒運転者に思うこと

2009年6月19日

独立行政法人国立病院機構 琉球病院 院長

村上 優

 

アルコール依存の治療に携わって30年近くが経ちます。そこで出会ったAさんは何度も病院へ家族に連れられてきたアルコール依存症の方です。飲酒を注意されても、交通の不便を理由に飲酒運転をやめませんでした。接触事故や飲酒運転検挙を繰り返し、免許が取り消され、それでも懲りず飲酒運転を繰り返し、執行猶予刑、そして交通刑務所に入るまでになりました。数年を経て妻に連れられ外来を訪れたAさんはやはり飲んでいました。仕事も生活も成り立たず生活保護を受給していたため車を持つことは許されていませんでした。

常習飲酒運転者の背景にはアルコール依存があることが指摘されています。沖縄県警察との共同調査では、飲酒運転等で免許停止された者の36パーセントに、免許取消者の49パーセントにアルコール依存を疑うという結果が出ました。またこの人々は飲酒運転を繰り返していますが、自らアルコール依存があると考えているか疑問です。少量だから、時間がたっているから、距離が短いから、いつもの道だから、運転に自信があるからなど、問題を軽視していることも調査より明らかになりました。

アルコール依存は自ら気がつかない間に罹患している習慣の病です。肝障害など健康を害して初めて指摘を受ける、職場や家庭で人間関係に支障が出て気がつくなど、人生の壁に当たった時に「アル中かな」とふと感じるものです。習慣ですからどこから病気かを自覚しにくく、学歴、職業、人格の貴賎を問いません。

飲酒運転に対して厳罰化は一定の効果があることは実証されました。一方で常習飲酒運転者の実態も明らかになっています。沖縄で考えると、運転免許を失うことは仕事や生活に大きな困難を抱えることに直結します。飲酒行動を改めなければ、Aさんように生活破綻も身近です。飲酒運転の検挙をきっかけとして、「病としてのアルコール依存」に対する意図的な働きかけを行うことが必要です。アメリカをはじめとするいくつかの国で、飲酒運転を繰り返すと治療を受けなければ再び免許は交付されない制度があります。飲酒運転を底辺から根絶するためには、視点を変えて「飲酒を自らコントロールできなくなった人々」を念頭に置いた取組も必要だと感じています。そしてアルコール依存は正しく理解して取り組めば、回復する病であることも強調したいと思います。